「打ち初め式」連日開催で碁正月を盛り上げよう

新春恒例の「打ち初め式」(日本棋院本院主催)があっと言う間に満員締め切り。日本、いや世界で初めてプロ棋士が誕生して401年目を迎える年の始めに、まずはめでたいとご同慶の意を表したいところだが、申し込みが遅れた私にとっては残念至極。すぐさま別のプランを仲間に呼びかけてしまったから、仮にキャンセル待ちで参加可能になってももう遅い。それにしても、国内人口の何割かを抱える首都圏を対象に「1日開催・定員150名」とはいかにも少な過ぎる。再来年からは「連日興行」を打っていただけないだろうか。

スポーツ、旅行、音楽などあまたの趣味の中で、囲碁・将棋は最もカネがかからない、つまりマーケットになりにくい趣味だ。私の周囲を眺めても、"市場に貢献しない愛好者"が半数以上、いや圧倒的多数かもしれない。地域や職場など身近に気の合う碁敵があれば十分に楽しむことができるし、たまにテレビやネットでプロ棋士の対局を観戦する程度なら使うカネは碁会所の席料と棋書購入費ぐらい。『週刊碁』や囲碁誌を定期購読する人は少なく、タイトル棋士の名前や日本棋院(関西棋院)の動きにもほとんど関心がない。免状取得意欲もひところからみれば大幅に減少しているようだ。

こんな閉塞状況を抜け出し、人間が発明した至上のゲーム文化の中核として囲碁をビジネスとして振興していくには、碁の深さ、すばらしさをプロ棋士が率先して啓蒙していくことが必要なのは言うまでもない。ところが、現行の「打ち初め式」の運営はその絶好の機会を最小限にしか活用していないように思える。スポーツにせよ旅行にせよ音楽にせよ、一般の生活者がお休みの時こそ最大の書き入れ時。だから競技者、役者、音楽家はこの期間に猛烈に働いて儲けるし、アマもそれを大歓迎する。

「打ち初め式」も、元旦を除いて1月2日から5日の囲碁の日まで4日間通して開催したらどうだろう。収入は4倍、コストを2倍程度に抑えれば少なくない黒字を見込めるかもしれない。もちろんそれには難題が山積しているに違いない。まずは会場の準備・整理、予約受付管理、スタッフの確保、サービスの質の維持、まだまだあるかもしれない。でもこんな問題は囲碁に比べればはるかに易しい。棋院のスタッフは少数だが精鋭ぞろいだから、多少の試行錯誤はあってもその気になりさえすれば必ずできると思う。

たとえば、最近急速に使い勝手が良くなってきたアウトソーシングを利用する。会場整理や予約受付業務などは最初の設計をしっかり決めておけばかなり安くサービスも充実できる。飲食物のケータリングだって見積もりに喜んで参加する業者が多いだろう。もちろん、大学囲碁部やプロ棋士のお弟子さん筋にボランティア活動をお願いすることも有効かもしれない(周到なリハーサルがないと足手まといになるかも)。肝心のプロ棋士は連日勢ぞろいする必要はなく、輪番制で奉仕していただく。2日は大竹&吉原、3日は石田&小川、4日は武宮&小林、5日はチクン&コーイチといった具合に代表ホスト・ホステスを決め、それぞれ仲間の棋士を誘って内容を競い合っていただくのも面白そうだ(敬称略、以下同様)。

囲碁マーケット拡大の機会は正月に限らない。端午の節句を中心とする5月のゴールデンウイークは「タンゴ・フェスティバル」。シェ・イーミン、高梨聖健、瀬戸大樹といった人気キャラクターが結成したシンガーグループ「モノトーン」や、チョウリュウ&リン・カンケツらによる「台湾青年行動隊」などの選抜部隊が連日趣向を変えてファンを呼び込むのだ。夏には「盆碁の集い」、秋には「紅葉ウオーキング&碁デイ」などもありそう。碁を愛する人たちが碁界発展のために汗を流すのは少しも苦にならないだろうし、碁の魅力に開眼したアマは喜んで協力するはずだ。

亜Q

(2012.12.22)


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