第5回UEC杯コンピュータ囲碁大会

12月4日快晴の日曜日に第5回UEC杯コンピュータ囲碁大会を見学してきた。この大会は電通大の伊藤毅志先生が委員長で、FOST杯を引き継ぐ形で行われている。今回の参加プログラム数は24。1日目に7回戦のスイス方式の予選が行われ、2日目が上位16プログラムによるトーナメント戦である。人間だと1日に7局打てといわれるとブーイングの嵐となりそうだが、コンピュータはそんなことはものともしない。

決勝に残ったのはZenとEricaである。Zenは天頂の囲碁のエンジンで、KGSでもその強さを証明している。Ericaは台湾のプログラムである。決勝戦の序盤、Zenは梶原流から武宮宇宙流を彷彿させる中央志向の打ち方。一方のEricaはどうも三三が好きなようで、外側に弱い石を抱えながら三三に入ったため、大変苦しくなった。結果はZenの完勝だった。Zenは予選を含めて11戦全勝で、2位以下のプログラムとは大きな開きがあるように感じられた。

優勝したZenと準優勝したEricaはゲストのプロ棋士とエキシビション対局が行われた。まず、Ericaと小林千寿五段の対局が行われた。手合は六子。通常通り置き石をおいて始まったが、すぐにトラブルに見舞われ、初手から打ち直しとなったが、今度は置き石が置けないというトラブルで、仕方がなく、白が5手連続パスし、自由置き碁となった。Ericaは石が競ったところでたまに明後日のほうに打つという癖がある。これはZenを除く他のプログラム二もみられる傾向でもある。結果は千寿先生の中押し勝ち(終局図は写真)。

次にZenと鄭銘コウ九段との対局が行われた。こちらも六子局。Zenは最初白の右下の石を攻めに行ったが、途中で断念し、今度は左辺の地を膨らませに向かった。今度はそこに打ち込まれた白石を強硬に攻めに行ったが、白は生きと脱出を見合いにしてしのいだ。その後のやり取りで、白は封鎖されたが、左上隅の黒も生きていないようだった。それより少し前、この白に手を入れるときは投げるときだと解説していた銘コウ九段は左上隅の黒と差し違える構えであった。観客の期待に違わず、Zenは目を取りに行った。ここからのZenは全く間違うことなく打ち進め、銘コウ九段の投了となった(終局図は写真)。銘コウ九段は大盤で解説しながら打ったので、気の毒であったが、Zenの強さが目立った。

Zenは細かいところで人間とは異なる打ち方もあるが、全体的には人間と打ち方と似ている印象だった。モンテカルロプログラムでは最終的に半目勝ちになることを目標としていると聞いていたが、Ericaとの対局では「勝ちました」のような手を打たず、さらに大きく石を取りに来るというようなところもあった。また、解説がここが大きいといったら途端にその手を打ったりするところもあった。HALのように人の会話が聞こえるようでもあり、小人さんが中に入っているようにも感じられた。

市販の囲碁プログラムのもう一つの雄である銀星囲碁のエンジンで知られる北朝鮮のKCCが第3回UEC杯で優勝してから参加していないようであるが、ZenとKCCとの対局も見てみたい気がする。何れにせよおおいに楽しませていただいた午後だった。

かささぎ

(2011.12.6)


もどる