少年三連星

年末のどさくさに紛れて「晩婚三連星」を書いたら、「少年三連星」も書かなくてはと思いついた。時は遡るけれど、たくせんさんがついこの間、美しい写真を添えてアップされた「2013ファンフェスタ in 箱根」の追補版と位置づけてくだされ。

同大会は10年ほど前から年2回開催していたからもう20回を数え、来場者は過去最大の140名以上に上ったという。その中で最も目立ったのは、小学生の三人の男の子。授業の関係だろう、段級位別大会では金曜日の対局を2局不戦敗で土曜日からの参戦。それぞれ三〜五段戦で見事4連勝していずれも3位に入賞だ。

しかもこの三少年の"毛並み"がゴージャス!山下ユウキ君(名前が烏鷺覚えなのでカタカナで表記いたす)は、父親が山下敬吾元三冠・九段、母親は高梨聖子さん(高梨聖健八段の実妹、ご自身も大会に参加されて六段の部で優勝されたのではなかったかな)。孔徳志君の父は、少年時代に数学オリンピックのメダリストになった孔令文七段、そのまた両親は中国のトッププロ、日中囲碁団体戦で"鉄のゴールキーパー"と恐れられたジョウ・エイヘイ九段と孔祥明九段、さらに先祖を探れば儒教の祖、孔子の末裔だそうな!)、母の清芽(さやか)さんは父が小林覚元棋聖、叔父に小林健二七段、叔母には千寿会を主宰される小林千寿五段。

そして私は、もう一人の後藤田コウヘイ君と手合わせする機会があった。父君は国会議員の後藤田正純氏、そして祖父は元副首相の後藤田正晴氏、母は女優の水野真紀さん。私がこれまで邂逅した中で最も完璧な知的美人だ。大会本番ではなかったが手合いは彼の常先。まだ10歳そこそこなのに、布石、手筋、死活の基礎は私よりはるかにしっかりしていなさる。しかしザル碁と言っても私は百戦錬磨の古狸。地には辛いが中央の厚みに無頓着なコウヘイ君のわずかな弱点を捉えて終盤に10目を超える中地を形成、大寄せが終わった時点で盤面で白が5、6目のリードと、周囲の観戦者にも認めてもらえていた。そして左上隅の白地から先手でハネツギを打って"勝利宣言"。

と、酔い痴れたのは私だけだったのだろう。ノータイムでコウヘイ君は「2−1」に黒石を叩きつける。打って返しを防ぐと白の取り番とは言え、黒の花見コウだ。悔しいから最後まで打ち終えて黒が盤面6目勝ち。コウヘイ君は当然のような顔つきで涼しい顔だ。今勝てなければ、私は死ぬまで彼に勝てないだろう。嗚呼無情、これも自然の摂理か。

亜Q

(2014.1.2)


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