太陽

昨日、ナノテク展を見に行った帰りに、市ケ谷の棋院に寄った。1階のロビ−にいると、原幸子さんが二人の子供と一緒に来られた。上の階に用事があるらしく、二人を連れてエレベーターに乗ろうとしたのだが、長男の太陽君が行かないと言い張った。しかたなく、原さんは「そこで待っているのよ」といって次男の大空君だけを連れて上がっていった。太陽君は1階ロビーのモニターを食い入るように見ている。モニターに映し出されていたのは棋聖戦第4局の封じ手の場面だった。「太陽君」と声をかけても返事がなかった。人見知りをしているのか。いや、きっと、原さんから「知らない人に声をかけられても返事するんじゃないのよ」と躾けられているのだろう。こんな怪しいおじさんならなおさらである。

棋聖戦第4局は依田挑戦者の快勝に終わった。もしかしたら、昨日の太陽君はモニターを見ながら、お父さんに“勝て”と念を送っていたのかも知れない。その最中に声をかけられたから、返事をしなかったのかも知れない。それでも、「碁を打つの?」とたずねたら、こくりと頷いてくれた。太陽君は顔つきも体つきもお父さんそっくり。きっと、お父さんを超える偉大な棋士になるだろう。

かささぎ

(2008.2.20)


もどる