「ペンクラブ大賞」制定を

                      K(さいたま市、男性)

 石橋幸緒棋士が「将棋ペンクラブ大賞」を受賞した(日本経済新聞9月29日付夕刊)。 彼女はまだ二十歳の若さだが、女流王将位に就いたこともある実力派なのだそうだ。 その彼女が初めて著した自伝『生きてこそ光輝く』(執筆時19歳)が対象になった。 生まれながらにして難病を背負い、命を見つめて生きてきた証を自伝にまとめたと言う。

 市井の人間が自己の人生を素直にまとめた自伝は一読の価値があるといわれる。 まして伝統的な技芸の世界で苦闘してきた人の言葉、文章にはより重みがあると思う。

 囲碁棋士にも筆の立つ人は少なくない。中山典之、小西泰三といった超ベテラン棋士 ライターは別格として、碁界は知る人ぞ知る棋力と文章力を兼ね備えた人材の宝庫では なかろうか。小島高穂、酒井猛、石田章らの棋譜解説文には、ちょっとした短文の中でも 軽妙かつ奥深い味わいを感じさせられる。

 若い人の間でも山田規三生、中澤彩子ら、物書き顔負けの文章を目にすることが多い。 矢代久美子は週刊碁に連載を始めて以来、独特のユーモア・おとぼけ文体を確立した。 棋士は一種の天才ゆえ何をやらせてもすぐにうまくなるのかもしれないと思わせてくれる。

 囲碁界にも「ペンクラブ大賞」ができないものか。私は碁こそ世界の知的文化の代表と なるべき存在だと確信している。世界トップクラスの対局者同士が心血を注いで創作した 「棋譜こそすべて」もいいが、ファンとしては同時に棋士個人の人となりを知りたくなる。 専門ライターによる客観的な読み物に加えて、棋士自筆の文章も是非読ませて欲しい。

 敬称略で独善的な生意気ごとを書き連ねてきたが、悪乗りついでに勝手なお願いを。 棋院内部で「ペンクラブ大賞」制定を働きかけていただくとともに、小林ファミリーの皆様に どしどしメッセージを書き込んでいただきたい。特に千寿さんは中山、小西先輩らとともに 「棋士文筆家」の一翼を担ってこられた名文家。ご多忙の合間に少しずつ書き溜めて、 我々ファンに読ませてください。

(2001.9.30)


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