日本の大学院で「情報化社会と囲碁」に挑む台湾出身棋士〜王唯任四段が千寿会に登場

王唯任四段
王唯任四段

 18日の千寿会のゲストは王唯任(そのまま「ゆいにん」と読むそうです)四段。ハンス・ピーチより年下の26歳ですが、日本での棋士歴は先輩の良きライバル。「入段前のピーチは欧州流の腕力碁だったけれど、厚い碁に変わっていった」と証言。盤を離れると登山、カヌー、卓球などを一緒に興じ大親友だったそうです。ピーチが早世したのは“美人薄命”そのものだと残念がっていました。

 自身は台湾の小学生だった頃、担任の教師から薦められて碁にのめりこんだとのこと。両親と二人の姉は碁を知らず、しかも教師も碁を打たないと言うからちょっと珍しい。算数などの学科で考えることが好きな子と見抜いて彼に碁を薦めた教師はまさに現代の名伯楽。王少年はその後メキメキ頭角を現し、台湾少年囲碁大会優勝のを機に知人が紹介してくれた日本の筒井勝美四段を頼って13歳で来日、今年で13年目を迎えます。

 尊敬する棋士はカイホー、リッセー、オーメンといった台湾出身の大棋士。親友はチョーウ、金秀俊ら海外出身組。しかし目標はヨタロー名人と覚九段。二人のような「バランスの取れ
た碁」を目指したいと言います。

 この彼は現在、桜美林大学(東京・多摩市)で修士課程に在籍する異色の修士棋士。そして彼が挑戦する修士論文は「情報化社会と囲碁の関連性」、まさに誰も手を着けたことがない型破りなテーマ。コンピュータが発達し、ネットワーク社会が広がる中で囲碁がこれからどう展開するかを考証するのだそうです。現在彼は週に2、3回通学して古今東西の歴史書を集め、アジアを中心に世界に広がる現代の囲碁状況を示すデータをまとめ、実証的に究明している最中。

 碁は序盤の研究がさらに進み、手合い時間は短縮され、現在の日中韓台の四極体制を超えて欧米、東南アジア、中東などにも急速に広がっていく。まさに碁はコスモポリタンの時代を迎えつつあると予言しています。論文がまとまるのは来年2月過ぎ頃。彼はこの千寿会にサマリーを送ってくれると約束してくれました。

 彼もまたピーチの志を継いで、日本を拠点に世界に囲碁文化を広める若き旗手の一人でしょう。

 棋士と修士の立場を離れると、彼は童顔のフツーの青年。松島奈々、松たか子のファンでカラオケは中島みゆきや安全地帯の曲を愛唱し、たまにはテレサ・テンや坂本九も歌う日本歌謡通。野球はやはり、王監督率いるダイエーのファン。親友チョーウやレーブンらの動向をよそに、「結婚はまだまだ考えていない」そうです。

亜Q

(2003.10.19)


もどる