快傑マイケル(中)

本稿(上)の末尾に予告させていただいたように、飲み会でのマイケル語録を後半の(下)でご披露したいと思っていたが、(上)をお読みいただいたマイケル先生から「実を言うと、コウに関する解説書を最近出したばかりなのです」との私信が届いた。チョーウvsレドモンド対局を大盤解説された千寿会では、コウの話で大いに盛り上がった。せっかくの機会なので、間奏曲代わりに(中)を挟んで紹介させていただきたい。同著は「コウが1から10まで分かる本」(マイケル・レドモンド著、マイコミ囲碁ブックス、1554円)。タイトルにあるように様々な角度からコウを分析しているので章ごとの部分読みも可能。マイケル先生は「現存する解説書の中ではコウのあらゆる考え方を最も追及している本だと自負しています」と自信たっぷりだが、「もしかすると懲りすぎの可能性が危ぶまれます」と補足されている。Amazonの在庫がまだあるようなので、棋力急上昇中のたくせんさんあたりがお目を通されたらぜひ名書評を書き込んで下さい。

囲碁書評と言えば、最近出版された高尾紳路著の「新版基本定石辞典(上・下)」をかささぎさんが紹介されていた。彼はその本で学んだエキスを私にもたまに教えてくれることがある。アタマが悪い私は本を読んでもなかなか実にならないが、好敵手の口伝はとてもよく頭に入る。持つべきものはよきライバルである。ついでながら、新版辞典の編集を協力された大橋拓文四段は「知っているつもりでも原稿にまとめる作業をすると理解がさらに深まるような気がする。少しは強くなれるかな?」と言われていた。大橋四段はプロ並みのピアノ演奏でも有名だが、最近は新人王戦、若鯉戦、竜星戦、三星杯などでも活躍が目立ち、編集協力効果が顕在化しつつあるのかもしれない。

「コウの第一人者」を自他共に認めるチョーウ四冠との大激戦を制したレドモンド九段は、ご自身がコウの解説書では最も本格的な自信作を上梓されたばかり。チョーウ四冠を相手にしたこの対局では、序盤から中盤にかけてどちらが仕掛けたとも言いがたい大コウが勃発。互いに「コウの碁になれば負けるわけにはいかない」と頑張られたのだろう。本棋譜はチ304手の大熱戦の末、チョーウ四冠の“鬼の猛追”を受けながらもレドモンド九段が半目余した。この碁は6月28日付『週刊碁』にエッセンスが掲載され、「レドモンド 金星」とタイトルをつけて紹介されている。お手元にあればご覧いただきたい。

亜Q

(2010.8.16)


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