第30期名人戦リーグ予想

 本因坊・王座に続き名人にも就位したウックンに挑む第30期囲碁名人戦リーグがスタートした。序列1位は名人位を失ったヨタロー、次いでシャトル、イマムラ、ケーゴ、オーメン、ケメオ、そしてソンジン、オガタ、サカイの3人が新参加。新年8月まで9人総当りの長期戦だ。昨期挑戦権を逃したシャトルは最年長の45歳。今期どんな戦いぶりを見せてくれるだろう。

 まずは大新聞に敬意を表して、朝日新聞の予想のさわりをなぞらせていただこう。メンバーは24世名誉本因坊イッシーに加えて、棋界きっての情報通オヤオヤ九段、向井梢恵初段。イッシーはソンジンを台風の目として、ヨタローの立ち直り次第で本命にもなると予想。オヤオヤ九段は「リベンジに燃える」ヨタローを本命、対抗は唯一の20代棋士ケーゴ。向井女流はリーグ参加者9人のうちただ一人の木谷門下の先輩シャトルを本命、対抗はケーゴ。

 ウックンのコメントは最年少者らしく「誰が相手でも自分が挑戦者」。しかし短い文中で、「優勝候補はヨタロー、ケーゴとシャトルが絡む」とも読める。

 本命・対抗に名前は挙がらなかったが、評価コメントが面白かったのはオーメン。「3つのリーグに入っている実力者だが、なにせ体力の要る碁なんだよね」(イッシー)。「豪快な碁を打つ割には結構理論派で、数字にも強い」(オヤオヤ九段)。

 シャトルは「ヨタロー同様、特定棋戦に照準を合わせるタイプ」(オヤオヤ九段)らしい。「カイホーのような上の世代がいればずいぶん楽なんだけど、若手が増えて余裕はないかも」「今後チャンスが何回もあるとは本人も思わないから、気構えは違うはず」(いずれもイッシー)。

 実は今期の予想は前期と異なり、僭越ながら私めの考えとあまり変わらない。1年前、私は開幕前に予想を立てた。本命はシャトル、リッセー。ウックンは黒馬とした。シャトルはカイホー、ウックンに連敗スタートだったが、イマムラ戦で立ち直り、以後6連勝。一方、ウックンはぶっちぎりの勢いだったが終盤足がもつれた。最終のチクン戦も完敗寸前。シャトルの大逆転――予想は大当たりのはずだったが、女神が気まぐれを起こしてくれた。チクンの大チョンボで流れが変わり、挑戦者決定戦とタイトル戦をウックンが制した。

 今期の開幕注目カードはヨタローvsソンジン、オーメンvsケメオ。いずれも前者が勝利。シャトルとサカイはそれぞれイマムラ、オガタを“順当に”下し、ケーゴは手空き番だった。イマムラはシャトルにリーグ戦初白星を献上してくれる福の神、ついでに新年の連勝も見込みたい。

 第2回戦は1月6日、ヨタローvsオガタ、シャトルvsソンジンで新年の幕が上がる。ソンジンはヨタローには敗れたが新婚を機に好調を維持。シャトルにとって第一の関門。ここをしのげば次のケーゴも勝てる。そして3月の手空き後の4月のヨタロー戦が天王山。ズバリここで勝った方、または3人の新参加者に負けなかった方が挑戦者になると見る。

 不気味なのはオーメン、サカイと、シャトルに勝った場合のソンジン。激変・オーメンの爆発力、安定・ソンジンの“新婚力”はいまさら言うまでもあるまい。失礼ながらサカイは、ここと言う時に力が出る“火事場のバカ力”タイプではないか。名人戦リーグ入りを賭けた羽根棋聖との枠抜け戦、古くは3年前のプロ入りを賭けた三連戦。「十分な研究と準備をして一局一局死力を尽くして戦う」との抱負も半端でない。

 蛇足ではあるが念のため、来期に残留するメンバーを予想しておこう。ヨタロー、シャトル、ケーゴ、サカイ、ソンジン。最後の1人は、オーメンより粘りのケメオか。

         ※        ※         ※

 末筆になりましたが、加藤正夫理事長が年末に亡くなられました。千寿会に参加されて「ボヤキ言葉の真犯人」を告白してくれたのはもう一昨年末になります。人一倍律儀で責任感が強かったのでしょうか。結果として殉職された形になりました。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。合掌

亜Q

(2005.1.2)


もどる