インターナショナルスクールで“数学”の授業!

めったにない快挙だと思うので、独断でご紹介させていただこう。何しろ、日本の囲碁棋士がインターナショナルスクールの「数学の教壇」に立ったのだから。と言っても、教師の資格やら何やらうるさい日本ではなく、世界有数の“数学大国”フランスでの話。

主役はもちろんチーママ。欧州での国際文化交流活動が最終ラウンドに差し掛かった3月の初旬、9歳から16歳にわたる4クラスの生徒全員を相手に、一日目は9時から15時、二日目は11時から16時まで。さらに3日間の講義(次回はシチョウ、ゲタなどの手筋を教えるそうです)が予定されているから、1クラスでざっと6時間もの集中講義になる。チーママはこれまで日本のインターナショナルスクールで1校、海外で2校教えたと言うが、いずれも「囲碁」を教える特別講義。「数学」の教壇で「囲碁という数学の新ジャンル」を、それもこれだけ長時間任されるのはもちろん初めての経験だそうだ。

大多数の生徒は囲碁の初心者。年齢に関係なく初めの20分を碁の歴史とルール説明に充て、すぐに13路盤で打ってもらった。このわずかな時間で8割の生徒が「アタリ」(チーママはいつも“打って返し”の例を使って説明されるらしい。驚くほど高レベルですね!)を理解し、最後まで打って勝負を決することができた。ただし、終局処理はもちろんチーママが手伝ったそうです。

講義を受けた生徒の反応がまたうれしい。数学本体よりはるかに魅力的な学問と受け止め、一人残らず夢中で取り組んだらしい。中には「囲碁講座を常設してほしい」とか「囲碁倶楽部はいつ開催するのか」と聞いてくる熱心な学生もあり、チーママは連日の重労働の疲れも忘れて大奮闘されたようだ。

教え子の総数は二日間で延べ160名。この学校は数学の学力に応じてクラスを編成しているから、数学力と棋力という興味深い相関の糸口もつかめるかもしれない。そしてこうした囲碁文化に親しんだ若い人を中心に囲碁が国際的に発展していくことを期待したい。

日本人囲碁棋士の数学教師がフランスで誕生するきっかけはまさに“瓢箪から駒”。愛娘アンナちゃんの学校の父兄会で担任の数学の先生とチーママの話が弾み、「僕の講座で特別講師を引き受けてほしい」と頼み込まれた。先生は碁を全く知らなかったと言うが、さすがは数学教師。直感的に碁と数学の相関を見抜いた目の付けどころがいい。頭が柔らかくて、きっと碁も始めれば強くなられるだろう。いいと思ったことを即座に具体化する実行力も絶賛に値する。

付け加えるみたいで申し訳ないが、連日強行軍を強いられる「囲碁マスターコース」を終えたばかりの体で数学特別講師を快諾したチーママの“男気(侠気)”も大いに讃えたい。こうした“意気に感じた行動”が国際文化交流の大きな原動力になると思う。

このチーママを唯一つ悩ませたのは、「生徒と一緒に食べてほしい」と勧められた学校給食。おいしいものを少量召し上がる飛び切りのグルメにとって、育ち盛りの青少年の給食は荷が重すぎたようだ。

亜Q

(2009.3.12)


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