第 12 回湘南ひらつか囲碁まつりから〜火花散る!金沢真新初段 vs チアキ嬢

 10月14日の日曜日、千寿会とその姉妹組織ハッピーマンデー教室の若き友人諸兄姉と共に、今年で12回目を迎えた「湘南ひらつか囲碁まつり」(2年前に参加した第10回まつりのことも書いています。よろしければご参照ください。こちらこちら)に参加した。当日は夕方に雨がぱらつくぐずついた天候だったが、平塚駅前の紅谷パトロールロードにずらり504面並べられた碁盤に前後2回、延べ1008人のアマ棋客が総勢82人に上るプロ棋士たちとの指導碁を楽しんだ。毎年の事ながら、木谷門下だけでなく他の門下からも集まったプロ棋士諸先生方、平塚市の関係者の皆様、ありがとうございました。

 こうしたイベントの醍醐味は、言うまでもなくいろいろな人たちとの触れ合いだ。第1回目の指導碁で甲田明子三段にたっぷり教えていただいた後、会場をうろうろしていた私に見知らぬ人から声がかかる。「箱根のふれあい囲碁大会でご一緒したS田です。指導碁券が余っているのでよろしければどうぞ」と棚からボタ餅のお誘い。私は喜んでご好意を拝受し、園田泰隆九段に初めて教えていただく機会を得た。たまたま隣で指導されていたのは覚先生。チラチラ私の碁を覗いて「もう楽観は禁物ですよ」とか「最後に決めるチャンス」とかささやいてくれる。「細かいながらも少し残る」と楽観していた私は絶対に気がつかないところだったが、覚さんのアドバイスを得て渾身の決め手を発見し、ひらつか指導碁2局を快く飾ることができた!

 すっかり気を良くした勢いで、私は仲間たちと連れ合って平塚駅ビル最上階の懇親会場へ。会場では特別ゲストの山下敬吾棋聖への花束贈呈式があり、私を激しく追い上げてくれる千寿会後輩のM女が贈呈役に指名されて大いに盛り上がる(M女は「こうなるとわかっていればもっと可愛い服を着てくるのだった」などと女々しいことを言っていたが、何、当日の服装も十分可愛らしかったぞ)。私はビールを片手に、当たるを幸い次々に棋士に声をかけた。後で名簿を確認すると30名もの棋士と話をしていた。日ごろ寡黙で鳴らす私が何というおしゃべり、はしゃぎ過ぎ。いい歳して、ちと恥ずかしい気もするが、もう手遅れだ。

 まずは、前日埼玉県久喜市で行われたNEC杯準決勝を見学に行って連日お目にかかることになった覚さん。依田前名人を相手に無念の大逆転負けを喫したばかり(私は依田さんも好きだから、あるいは覚さんへの応援が行き届かなかったのかも)。「あの碁を何で負けたかねぇ、全く絶不調です」。

 NHKの講座で好評を博した大森泰志八段には「石の磨き方」を尋ねた。「梅沢由香里女流棋聖、水間俊文七段と比べてあなたが最も手際がいいそうですね」と問いかけると、傍らから水間七段が「梅沢先生のブログに書かれていたのです」と助け舟を出してくれた。ブログには「大森八段が最も要領が良く、水間七段は一つ一つの石に思い入れを込めるタイプ、私(梅沢女流棋聖)はその中間」と、由香里姫独特の誰にも気を配った書き方だったが、大森八段はやや恥ずかしそうに「水間先生はじっくり型。私は足早な棋風なのです」と巧みにしのがれた。

 今年入段したばかりの地元出身・金沢真初段と向井3姉妹の末妹チアキ嬢との間接対話も面白かった。二人はつい2日ほど前にものすごい碁を戦わせ、ネット中継でチアキ嬢の怪力を見せ付けられたたばかりだったから。まず金沢真少年に「あの碁は右下を固く備えて、“勝ちました”ではなかったの?」と聞くとこっくり頷いて、「まさか包囲している僕の石を取りかけに来られるとは思わなかった。それでも攻め合いはいいと思っていたのだけれど、1手間違えました」と悔しそうな表情。この話をチアキ嬢に伝えると、「あのままでは大石が全部死んでしまうから必死でした。でも、金沢君はどこを間違えたのだろう?」と訝しげな表情。一瞬、ライバル意識が火花を散らせたようにも見える二人は、これからも各棋戦を通じて碁界を盛り上げてくれるだろう。

 向井3姉妹の2番目のコズエさんは相変らず可愛らしい。入段は3姉妹の中で最も早かったが、「妹のチアキに二段を先に獲られました。これから挽回して抜き返します」と壇上で挨拶していた。そう言えば女流名人戦では敗者復活の決勝で長姉のカオリさんとチアキ嬢が激突する。この二人に挟まれてコズエさんはやや取り残されたようにも見えるが、彼女には何でもうまくやっていける良い意味での要領の良さ、華やかさが備わっているような気がする。例えば、大会では梅沢由香里女流棋聖が挨拶や司会に大車輪の活躍を見せていたが、細身だし三十路の半ばに差し掛かって必ずしも体力抜群とは思えない。ナオたん(万波奈穂初段)、ミエたん(中島美絵初段)らと共に、由香里姫やカナたん(万波佳奈三段)らの良き後継者として、ファン開拓でも活躍して欲しい。(続く)

亜Q

(2007.10.20)


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