建国記念日に千寿会の重鎮二人がそろって新聞紙上に

千寿会の会友と言うより「重鎮」と申し上げたいお二人が、2月11日の建国記念日にそろって顔写真付で新聞の紙面を飾られた。

一人は碁界であまねく知られる大坪英夫さん。大手銀行から転進された㈱東京精密を短期間で建て直し、ご自身の報酬を割いて女流タイトル戦「東京精密杯女流最強戦」を創設するなど多大な貢献をされて2010年には囲碁界最高の顕彰とされる「大倉喜七郎賞」を受賞されている(参考)。今回は「名誉九段」を拝命したニュースが『週刊碁』2月18日号8面の囲み記事で紹介載された。2003年、女流最強戦に各棋戦に先駆けて「コミ6目半」を導入、この結果黒番に一層の工夫が見られるようになって日本の碁が成長したというのが授賞理由。「名誉九段」を持つ方は元首相、宗教家などに限られ、とても希少価値の高い勲章だ。授賞式の後、女流最強位2期タイトル者の鈴木歩六段と記念対局された結果は報じられなかったが、大坪さんの先で1勝1敗、共に2目差だったらしい。私は大坪さんから受賞した翌朝に電話をいただいて知らされたが、日ごろは仕事でも碁でも厳しい姿勢を貫かれている大坪さんがとても喜ばれている様子が印象的だった。

もう一人は最長老会員の濱野彰親画伯(86歳)。日本美術学校の油絵科を卒業後、推理小説雑誌の編集長に見込まれて挿絵に手を染めて67年間、松本清張の「黒革の手帖」、山崎豊子の「大地の子」をはじめ、新聞、週刊誌、月刊誌を問わずピーク時には月に40本、150枚以上もの挿絵を描いた超売れっ子画家が、日本経済新聞の中でも実読率が高いと言われる朝刊最終面の文化欄に「挿絵で描く人間の本性」と題して今なお現役を続けながら挿絵に心血を注がれる心意気を語られた。パートナーになった作家の中でも松本清張さんは小説の舞台となる場所に濱野さんを招き丁寧に状況を教えてくれたが、その半面「ごまかしが利かない」ためとても緊張したこと、挿絵画家は作家と組んでやる仕事だから、半分しか自己表現できない。逆に言えば、半分は自分を出してもいい仕事だと信じていること、自分の目で物を嗅ぎ分け、社会の本質に迫りながら人間の本性を描き出したい、そのうえで小説の世界と響き合えたらすばらしい――といった率直な心情を2枚の挿絵を添えて語ってくれた。参考までに、そして2012年12月31日付「濱野彰親展」もご覧ください。

亜Q

(2013.2.13)


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