囲碁に性差はありや?(続編)

猛女N.O.のオバチャマの祟りに遭った時だったろうか、いつぞや頭書タイトルの雑文を書き散らしたことがあったが、7月8日付日経新聞夕刊で観戦記者も務める同紙の木村編集委員が「頑張れ将棋の女流棋士」と題したコラムを書いていたのでご紹介しよう(以下引用。多少文章が違っている部分があります)。

韓国主催の「三星火災杯」が囲碁世界戦としては初の女性特別枠を設け、この8月の予選から新制度がスタートする。ご存知ゼイ・ノイをはじめ中国、韓国の女流強豪がどこまで男性棋士を食うか。

韓国、中国には及ばないが日本の囲碁女流棋士も力をつけている。昨年の日本棋院での男女対決は672局で公式戦全体の15%を占めるまでになり、女性棋士の勝率は3割4分。全体的にはまだ男性優位だが、タイトル経験者が負けても誰も驚かなくなった。

これに比べると将棋の女流棋士の活躍度は低い。昨年度の男女対決はわずかに25局。女流を合わせて棋士の数が囲碁の半分以下という状況を考えても異様に少ない。

背景にあるのは女流棋士に対する位置づけの違い。囲碁では入段の際に女流枠はあるものの、プロになれば条件は男女同一。しかし、将棋ではプロの関門である奨励会を突破した女性はおらず、女流棋士は別制度で格下扱い。男女対決は女流タイトル保持者らに参加を認めている棋戦だけのため対局数が少ない。

男女対決は女流トップ棋士だけに限られているのに、昨年度の女流の対男性勝率は2割に過ぎない。棋力に差がある以上、格下扱いも仕方がないが、将棋人気を高める観点からは女流棋士をもっと目立たせる工夫があってもいい。「プロを目指す女の子が増えている」(中井広恵女流六段)状況ならなおさらだ。(引用終わり)

木村記者が書きたかったのは将棋女流棋士へのエールだが、私は囲碁の方が将棋よりはるかに女性の可能性が高い点に注目する。では対男性勝率が高い女流棋士は誰だろう。『碁ワールド』誌がまとめた(おそらく2004年末現在)結果によると、堂々の1位は由香里姫(勝率.567)、2位は泉美女流最強位(同.531)、3位キクヨ女流名人(同.509)。4位ヤッシー女流本因坊以下は負け越している。

注目株は14歳で入段して女流最年少記録を達成したシェイ(謝)・イーミン三段。名人戦リーグで活躍する黄・イソ七段らを撃破して井山悠太七段との中野杯U20選手権決勝戦に臨む。対局数は少ないかもしれないが、きっとかなりの勝率で勝ち越しているだろう。

彼女は師匠の黄孟正八段をはじめ、棋士の研究会に8ヶ所も通っているという(オーメン&ジョー、林海峰、ウックン、王立誠、柳時薫、金スジュン各氏の研究会)。院生時代には、本サイトでお馴染みのカモメのジョーさん(剱持丈七段)の家で何局か教えてもらったことがあるというが、「定先の手合いで全然ダメ」だったらしい。ジョーはレーブンさんと違って女性に強いのかもしれない。

となれば、品格高き私の好奇心がぶち当たるのは当然、「女流に弱い男性棋士は誰か」。かつてハンス・ピーチ(故人、六段)が入段した時、『週刊碁』の主催でプロになって最初の手合いをトップ棋士と当てられたことがある。ピーチの師匠チーママはその時、「もし勝ち目があるとすれば依田碁聖(当時は名人だったかもしれません)ではないか」と予感したそうだが、ピーチは見事抽選で依田碁聖を引き当て、しかも依田碁聖“得意の半目負け”を引っ張り出した(本サイトのハンス・ピーチ追悼ページに掲載されています)。

ハンス・ピーチはもちろん女流ではないが、私がにらむところ、依田さんのようなタイプ(棋風ではなく精神構造、もちろん私の勝手読みです)こそ、女流に弱いのではないかと思う(この場合、一般勝率と対女流勝率との格差に注目するべき)。失うものがないザル碁のオジサンには何の怖いものもない。ズバリ名を挙げさせていただけば、乱戦家のゴロー九段あたりではあるまいか(もちろんこの推定は私独自の見方で、“チーママ
の示唆”は一切含まれていません)。

亜Q

(2006.7.9)


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