棋士の愛唱歌 Part.2

 40人ほどの元紅顔・白皙の青年たちが集まった勤務先の同期会で、何と2人の友人から当サイトを見ていると言われた。「“花街”を“花町”などと書くな」「もっとほかの棋士の愛唱歌も出せ」などと言われて、私は舞い上がった。この種の“お叱り”に私はきわめて弱い。取材の不足は我が灰色の脳細胞をフル回転させて想像力・創造力(捏造力ではない!)で補いつつ、滅茶苦茶にリクエストしまくろう。

 イメージが湧くのは、シューコー先生の言うところの“個を立てた”棋士が多い。まずはシューコーのライバル・大サカタ。「王将」または「愛サンサン(燦々)」あたりが衆目の一致するところ。本因坊位を9連覇した“流水不争先”のタカガ秀格先生は「川の流れのように」、天才ウタローは「関白宣言」、変幻ヤマベは「男の純情」、昭和の名伯楽・大木谷は「あー、道場の灯よいつまでも」。昔の先生の中で大賞(賞品はないけれど)を決めるなら、ゴ・セーゲン老師の「赤城の子守唄」。直立不動で歌う東海林太郎の歌い姿がぴったりだ。

 現役棋士のトップバッター、紫綬褒章者・オータケ名誉碁聖は「幸子」、または“幸子の幸はどこにある”「赤色ブルース」でもいい。名誉天元のリンカイホーは「昔の名前で出ています」、コーイチは「走れコータロー」または「イエローサブマリン」、24世本因坊のイッシーと元天元のカタオカは「神田川」とか「赤ちょうちん」、25世本因坊・チクン大棋士は「氷の世界」または「赤いハンカチ」、糸が切れた凧みたいなオーメンは「見果てぬ夢」または「フライミートゥーザムーン」、いまだに青年ユーキは「嵐を呼ぶ男」、東の貴公子・セーケンは「宇宙戦艦ヤマト」または「妹」、西のキムタク・倉橋九段は「骨まで愛して」またはピエトロ・ジェルミ監督の名画から「ワラの男」、武闘派ゴローは「無法松の一生」または突然テンションが上がる「大都会」、博覧強記のアベチャンは「娘よ」、テンコレ文士は「琵琶湖シューコーの歌」、そして現役男性棋士大賞は般若棋院のモー先生が大評判の絶叫節をがなりたてる「女のため息」。

 女流ではまず、棋士会長の杉内寿子大御所に「岸壁の母」をお願いしよう。梅沢ウカタン姫は「何てったってアイドル」、シンカイ最強位は「いい日旅立ち」ではなくて「酔いどれ女の子守唄」、関西のT・アッコ四段は小坂明子の「あなた」、GANMO姉は飛ぶ鳥を落とす勢いだった「あの日に帰りたい」、しかしもう少女棋士ではないから「白い靴下はもう似合わない」、アユミ前最強位は「UFO」、トーゲイに凝るカトーモコ元女流名人は「女ひとり」、ホンダCB400SSを乗り回すM幡T栄子三段は「アンチェイン・マイハート」または「22歳の別れ」。私がこっそり応援しているシブシブのマッチーは「碁盤外のマッチー」。そして女流大賞はヤッシー五段。リンダの「こまっちゃうな」または目いっぱい鼻にかけて流す「チャンチキおけさ」だ。

 デュエット部門では、イズミ&ウックンが「ある日突然」または「愛の奇跡」、それぞれ単独に歌うなら「年上の女(ひと)」と「年下の男の子」、チネリン女流本因坊・棋聖とヨイカゲン九段のおしどりコンビは「いい湯だな」(混浴?)、ナッチ&シンディーは「ヘイポーラ」またはリズ・テーラーの夫君だったエディー・フィッシャーのヒット曲「いとしのシンディー」(まるで知らんだろうな)。変わりどころでは水間七段と陽光四段のホモ・デュオで「時計」。そしてデュエット大賞はヨタロー碁聖。ソロで歌うなら「ヨイトマケの歌」だが、糟糠の妻とも言うべきサッチーとのデュエット「昭和枯れススキ」が絶品だ。

 名前から連想される駄洒落歌では、たとえば木谷道場のエリートだったHAL九段の「北国の春」、ピーチやオンドラ君の兄貴分・剱持ジョー兄の「硝子のジョニー」、秋山次郎はそのまんま「ごめんねジロー」、羽根棋聖は「ハネはどこへ行った」または「翼をください」、瀬戸U20杯者は「瀬戸の花嫁」、井山ユータは「オンリー・ユータ」、山本賢太郎は「北風小僧のケンタロー」または「ケンタロー好きよ歌」(全然知らんだろうな)、鈴木イチャオ七段は「チャオチャオ・バンビーナ」、青葉かおりは「青葉嬢恋歌」、奥田アヤちゃんは「最後にアヤは勝つ」、井澤秋乃は“イザワモーアキー”で始まる「誰もいない海」、M幡T栄子三段の「匕首マッキー」(映画化された)もこのジャンルだ。そして大賞は重戦車・山下敬吾。昔はやったダンモ「サイドワインダー」もいいが、あれは歌詞がないから「ケーゴの夢は夜開く」(知らんだろうな)で決まりだ。

 逆に歌の方からアプローチしていくと、ぜひとも誰かに当てはめたい歌がたっぷりあるのだが、具体的に特定するのが何かと悩ましい。例えば「酒と涙と男と女」「悲しき片想い」「悲しき60歳」「テ・キエロ・デ・ヒステ」「マイ・フーリッシュ・ハート」「ア・フール・サッチ・アズ・アイ」「酒よ」「卒業写真」「センチメンタル・ジャーニー」など。男性向けなら「愚か者」「ミスター・ロンリー」「ボクサー」「マイファニー・バレンタイン」「ミスター・サマータイム」。女流向けはもっと多彩。「女の意地」「女の道」「女の操」「噂の女」「さそり座の女」「待つわ」「ブルーレディーに赤いバラ」「北の宿から」「恋の奴隷」「想い出酒」「恍惚のブルース」「アカシヤの雨がやむ時」「時には娼婦のように」「デザイヤー」「悪女」「モナリザ」――。

 大賞受賞曲の女流部門は接戦で「天城越え」に決定。切ないしぐさを派手にたっぷり盛り込んでカナ前女流棋聖に歌ってもらおう。男性棋士部門は断然ぶっちぎりでこの人、タケミヤ大風呂敷センセー。多数の美女を引き連れて、「マツケンサンバ」を狂い呆けたように歌い踊っていただきます。

 最後に、甚だ唐突かつ畏れながら、チーママ師匠、O.誠子大姉あたりに謹んでご参加をお呼びかけ申し上げたい。「よろしければ上記女流向け名曲のどれかにトライなされてはいかがでせうか?」――。

亜Q

(2005.3.15)


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