蚊帳の外

 お家芸の危機——。国際柔道連盟(IJF)で日本が理事のイスを失うピンチにある。ただ1人の現職である山下泰裕氏(50)が再選を目指して10日の選挙に立候補したが、劣勢を伝えられる。

 こんな話が9月4日付の日経新聞に載っていたので、遅まきながら引用させていただく(以下、部分的に文章を刈り込んで紹介)。IJFの理事は全部で11人(会長と5人の副会長のほか、事務総長、財務総長、スポーツ、審判、教育コーチング各担当)。日本は1952年に加盟して以来、常に1人以上の理事を送り込んできた。現在は山下氏が2003年に教育コーチング担当理事に就任、改選期に当たる今年も再選を目指しているが、アルジェリアのモハメド・メリジャ氏という強力なライバルが出現した。

 苦戦の背景には、韓国出身の朴会長と欧州諸国の熱い支持を得るオーストリアのビゼール副会長の激しい権力争いがある。両者は2年前の会長選挙で対決、朴氏が3選を果たしたが、ビゼール氏は投票に不正があったとしてスポーツ仲裁裁判所(CAS)に訴えた。結果は棄却されたが、理事会の多数派工作で朴氏追い落としを狙うビゼール氏が、朴会長を支持する山下氏への刺客としてメリジャ氏を擁立した。前哨戦と見られていたこの5月のアジア柔道連盟会長選では、ビゼール氏が強力にバックアップしたクウェート代表に日本代表が大差で敗北を喫したという。関係者の評価では劣勢は免れそうもないようだ。

 理事のポストを失った場合、日本が最も恐れるのはルール改正や五輪の出場枠、大会運営などを巡って蚊帳の外に置かれること。12年前、カラー柔道着を争点に敗れた会長選の苦い記憶は消え去っていない。(以上で引用終わり)

 日本が生んで育て上げた柔道が、今やすっかり国際化している。スポーツにせよ競技にせよ、あるいは「道」と呼ばれる文化、技芸にせよ、国籍や地域の利害関係とは本来無縁であり、どこの誰でもあまねく広く魅力を享受できればいい。その意味で、柔道にとっては「喜ぶべきこと」かもしれないが、「蚊帳の外」となるのは日本人の端くれとして一抹の割り切れなさが残る。

 ところで、碁にも「IJF」とよく似た「IGF」という国際組織があった。HPの宛先を見ると日本棋院の中にあるらしい。国際通の「かささぎ」さんが調べてくれたリンク先をたどると見失ってしまうのだが。活動ぶりは英文で書いてあるためよくわからんが、「IJF」に比べればまだまだ発展途上と言えるかもしれない。各国の碁の組織を世界レベルで統括し、国際的な権威あるイベントを主宰するまでには今一歩のようだ。

 とすれば、組織を活性化して世界の碁界を盛り上げる国際派キーパーソンが大いに求められる。もちろん碁を愛し、国際的に堂々と高段者と言える程度のレベルであって欲しい。さらに発音は下手でも、少なくとも英語で臆せず会話できる能力が必要だし、情報化時代にあって高度なITリテラシーも不可欠。それは誰か。私は碁界の人事部長さんになってしばし沈思黙考した。斎戒沐浴、飲食を断って長考を重ねること数十秒、最も重要な能力は「ノミュニケーション」だと気がついた時、凡夫の私に天啓が舞い降りた。

 我がノーテンキ教祖「かささぎ」さん、何と身近に「青い鳥」がいたのだ。何しろ、飲み会の席でのかささぎさんの存在感は抜群。ちょっとした失敗談(もちろん作り話)やつまらない駄洒落に最も敏感に反応し、いつまでも○○笑いを続けて転げ回る。ちょっとおだてれば、カラオケの口火とつなぎ役も喜んで引き受ける。きついことを言っても、どこか憎めない関西弁やから角が立つことは決してない。

 このかささぎさんを国際舞台に送り込めば碁を愛する人は世界中に広がり、囲碁文化が国境を越えて発展していくことだろう。少なくとも、日本が「蚊帳の外」に置かれることだけはあるまい。

亜Q

(2007.9.9)


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