時間切れ負け制の終局問題

 わたしは時間切れ負け制の終局ついて、二つの疑問があった。時間が切迫しているとき。
1、時計を止めるのはいつか。
 相手が終局に同意しないときはどうするか。
2、大石を取りあげなればならないときどうするか。
 ローカルな大会では、いつも「石を取りあげてから時計を押してください」と注意されていたのだ。大石を取りあげているうちの時間切れ、を心配してしまう。

 先のアジア大会で、時間切れを狙う組があった(参考)
 審判の裁定で反則負けになったが、その裁定の根拠は「成文化したルール」であったという。棋士も納得した(本当かな)そうだが、どのような文だったのか知りたい。
 この問題は、時間切れ負け制では必然ではないかと思えるのだ。わたしは「幽玄の間」でその棋譜を見ることができたが、肝腎の部分はなかった。

 白▲に黒は手抜きして上辺に移り、ここで終わっている。この部分なら問題ないはずだが…と思っていたら、問題はこの後に生じていた。この後に自分の地中に無意味な手を十数手打ったという。
 まさかと思っていた「1、時計を止めるのはいつか」問題が、プロの手合いで現実に生じたのだ。
「2、大石を取りあげなればならないときどうするか。」については、かささぎ師兄が、「石を取りあげる時は、時計を止めてよい」と言っていた。

   …………………………

「囲碁の新常識」という本がある。
石田芳夫   河出書房   06.7
 この本の存在はかなり前から知っていた。それでいながらなかなか読む機会がなかった。発行してからすでに5年以上たつ。先日、日本棋院に行ったときこの本を見つけた。1500円。
 変化の著しい定石・布石とルールの追加事項を取り上げている。新常識というが、わたしはもともと旧常識なるものを知らないので、定石・布石の新しい常識と言われても猫に小判。
 マナーと対局の仕方の話なども詳しく書かれている。囲碁規約に関しては全14条をあげ、重点を解説している。ルールの追加には、読んでおかなければならない大事なことがあった。
 ここで取り上げたい文は、平成15年1月改訂の次の条文だ。

 日本棋院対局管理規定第28条
(1)石を盤上に打ち、手が離れた時点で着手の完了とする。
(2)着手によって取り上げなければならない石を生じた場合はすみやかに取り上げることとし、取り上げなければならない石を全部取りあげたとき、着手の完了とする。ただし、当該着手に関する秒読みは、打った石から手が離れた点で終了する。

「着手」と「着手の終了」を区別していることは知っていたが、時計は着手の時点で止めるのだった。つまり時計を止めてから石を取りあげてよい。そして取り終わった時点を着手の終了として、再び時計を動かす。
 なお、第28条(3)には、取り残しても反則とはならないという条文がある。
 この規定により、「2」問題は解決した。しかし、対局の停止に同意せずに無意味と思われる手を連発する問題は、解決していない。
 だからアジア大会の「成文化されたルール」の内容を知りたいのだ。

 わたしのまわりの人は、時間切れを狙われることを心配して時間を残しておく、という人が多い。逆に、時間切れ狙いはめったにないので、その時は「一生に何度もあることではないので、運が悪かったと思って、終わりにする」という人もいる。

 わたしはダメを詰め終えるまでが対局と言われればそのように打つし(注1)、同意するまでといわれればそのように打つ(かな?)。
 普通は同意するまでで、同意した時に時計を止めて、ダメをつめて終局とする。
「同意するまで」の場合、ダメがなくなっても同意せず、時間切れ狙いで地中に打つ相手には、最短でも360手(注2)近くは覚悟しなければならない。そのような相手には意地で対抗してしまいそう。

注1:ダメの空いているときには対局の停止を求めない、時計も止めない。ダメがなくなった時点ではじめて「パス」を告げ、同意を求める。パスも一手になり、相手は手があると思えば、続けて打ってよい。これは「対局の停止」がなく終局になる。
注2:相手が自分の地中に打てばこちらはパス。相手がこちらの地中に打てば適宜対応する。普通なら五百手以内で終わるのではないか。
 黒なら183目(活きるために地が2目ある、計185)が自分の石になれば勝ちが確定。181+4目=185でコミが出る。こうなったら相手がどんな手を打とうがパスで通す。パスなら1分に100手は打てそうだ。うっかり抜いてしまうと、抜きあとに打たれて手数が伸びてしまう。現実にそうなると一目で優劣は判るだろうから、迷うことはない。

 わたしは「切れ負け制」と「同意するまで」の2条件を聞いたときに、すぐにこのように考えてしまうのだ。こんなに細かくはないにしても。
 言うまでもなく、秒読み制にすればこの問題はなくなる。

参考:2009ファンフェスタin箱根(下)

謫仙(たくせん)

(2011.1.4)


もどる