“棋士格差”は広がっている?

「日本に光と影が二極分化し、格差が広がっている」——と、参議院議長が首相に格調高く質したらしい。何であれ、人間社会に格差はつきもの、というより“必要悪(善?)”とも思えるが、今のご時世で所得格差が広がることがいいことかどうなのか。そもそも本当に広がっているのかどうか。

広い世の中には頭のいい人がいて、この格差を示す指標がちゃんと用意されていた。「ジニ係数」(統計の各個体=標本=の大きさに関する分布状況の平準度を見るための指標)と呼ばれ、値が小さいほど平準度が高いらしい。

数式を見ても私にはちんぷんかんぷん、かささぎさんに聞けば立て板に水で解説してくれるだろうが、またさげすまれても何だし。4月19日付の日経新聞によると、要するにジニ係数とは0から1までの範囲で定義され、0なら全員の所得が同じ、1なら一人が所得を独占。0.5なら、「上位4分の1」が全所得の4分の3を占める状況を指すのだそうだ。

何とかここまで理解すると、ノーテンキが骨の髄まで沁み込んだ私の関心は日本経済の行く末から“棋士格差”にすっ飛んだ。もちろん、所得格差の話ではない。日本棋院と関西棋院合わせて仮に公式手合いが年間1000局あるとして、その勝ち星がどのように分布しているか。大手合いが廃止され、予選方式もC→B→Aに変更されて強いもの同士が当たる可能性が高くなったことなどを勘案すればかなり平準化してきたようにも思えるが、負けが多い棋士は手合いが少なく、一部のトップ棋士が年間50以上も勝ち星を稼ぐことを考えれば、格差は広がっているのかもしれない。

私は発作的に『月刊碁ワールド』最新号を引っ張り出した。日本棋院所属棋士の1〜3月の成績を基にジニ係数を弾き出そうと思ったのだが、すぐに諦めた。そもそもこの私が間違えずにそんな数値を出せるわけがない。しかしその気になれば、日本棋院の優秀な職員ならパソコンで鼻歌交じりに弾き出すことだろう。この際、日本棋院と関西棋院は一緒にして、過去に遡って調べてもらいたい。10年前、20年前とどれだけ変わってきているのか。これはコミの優劣と同じぐらい興味深いデータだ。ついでに、中国、韓国、台湾などにも呼びかけて各国がどんな推移を見せているか、国際比較を試みて欲しい。

亜Q

(2006.4.21)


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