Merry Christmas!

(千寿先生からのお便りを転載いたします。かささぎ)

今年はウィーンからのクリスマスのご挨拶になりました。3月14日から文化庁の指名により文化交流使としてオーストリア・ウィーンを拠点に欧州での囲碁指導・普及の励んでいいる最中です。任期は1年で、2008年の3月13日迄です。

今は世界の若者の間で「クール Japan」(かっこいい日本)が浸透しています。その中には「日本マンガ」が日本文化のへの入り口となっていることも多く、「ヒカルの碁」も仏、独、英語に訳されています。そして今度はロシア語に訳されると聞きました。

このマンガの大流行はフランスから始まり、今ドイツ語圏に広がってきています。その流れを見て、そろそろドイツ語圏内で本格的に教えられる機会があれば良いなと考えている最中に、オーストリアの囲碁協会から熱い招聘を受けました。丁度、第51回目の欧州選手権戦が7月にあり、それを手伝うためにもウィーンを拠点に指導をすることに決めました。

ウィーンに移り7ヶ月が経ちますが、本当にタイムリーなときにウィーンへきたと感じています。

現在の私は東京にるときよりも忙しい毎日です。毎週、学校の囲碁部3つ、囲碁講座2つ、大使館の広報センターの初心者クラス。これに、週末のマスターコース(強い若者たちの勉強会)イベント、地方、多の国の囲碁大会などがあります。

その上になんと、欧州初の会員制囲碁クラブが誕生しました。今月はその立ち上げにオーストリア囲碁協会のメンバー達と多く話し合いが持たれました。まだ、有料で碁クラブを経験したことがない欧州の人達ですから、話し合う視点が日本のものとは全く違います。私自身も日本での経験を元に、こちらの人々の習慣、考えからを学びながら新しい囲碁界を作る手伝いをしています。

しかしながら改めてこのような公式な立場で日本文化の一つとして碁を世界に伝えることの意義を日々、再確認している毎日です。又、海外滞在が今まで多かった私ですが、ここまで腰を落ち着けて海外囲碁普及に徹することは初めてで、海外で暮らす大変さも経験しています。

ウィーンには、今年初めまで住んでいたジュネーブと同じく、国連などの国際機関があるために多くの国々の人々が暮らしています。そして、東欧の窓口でもあるため、チェコ、ハンガリー、ポーランド、トルコの人々などの人口割合もかなり高いです。地下鉄の中での人達の会話は、聞いたことが内国の言葉が氾濫しています。今まで、一介のツーリストとして尋ねていたことウィーンの表面の顔から、長年、大国を誇った複雑な歴史を背負った国のカオスの世界を垣間見ています。

その中での暮らしは、日本の便利さ、勤勉さになれている私達には、なかなか思うようにならないことも多く、心身共に鍛えられることも多いです。不可解、不便さに出会う度に日本が生みに囲まれた幸せな歴史を持てたことに改めて感謝、感謝の気持ちになります。

海外囲碁普及を公の立場で行うチャンスに恵まれ、今年は非常に充実した日々を送ることが出来ました。来年3月以降も、何らかの形でこの普及を継続する必要性を感じています。

現在の「日本文化ブーム」の時、碁を世界に普及する絶好のチャンスだと感じています。そして、少しでも本物の日本文化を碁を通じて伝えられたらと願っています。現実的に、若者の囲碁人口の急増と碁の指導者不足であるうちは、日本と世界をいったり来たりの生活を続けることになりそうな気がします。

こんな状況をどのように日本側に伝え、どのような活動が可能か、残念ながら皆目わかりません。でも、今まで通り、やれるだけやってみたいと思っています。

この便りをお送りする皆々様には、いつも暖かい応援をいただき深く感謝しております。そして又、自分に課せられた「世界の碁」を広げる為に、日々、努力していく所存です。この1年間の活動報告を簡単にまとめたつもりですが、少し長くなりました。任期はあと3ヶ月ありますので、あともう一頑張りしたいと思います。

ウィーンは、11月半ばには雪が20センチも積もりました。日本も、そろそろ寒くなってきていると思います。どうぞ、体調にはくれぐれもお気を付けて新しいお年をお迎え下さいませ。

敬具

2007年12月吉日

小林千寿


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