耳赤・恥の一手 亜Q-聖健 パート2C

 今回は右辺、左下、右下、そして話題提供サービスを兼ねた“異見”として上辺に回答が分かれました。出題者冥利に尽きると喜びたいところですが、出題者の独り善がりの意図を読んで変化球を投じる“ヒネクレ意見”には背中に冷たいものが流れました(でも、こういうヒネクレが私は大好きなのです)。そしてついに「ズバリ賞」が!

第四譜 (36-47)

 私が打った黒36は15-十五。少々迷ったけれど案ずるより産むが易し。形もよさそうだし、我ながら大いに満足でした。貴公子も「とてもいい見当」とほめてくれました。「右辺の確定地化を図る16-十一あたりに目が行くかもしれないが、白から例えば17-九に打ち込まれると、黒が16-九に上から閉じ込めれば下でサラサラ生きてしまうし、17-八に遮っても18-八からハネツギを利かして自在に捌ける。白から18-六サガリ、15-六飛ビ出シなどを見られているので、黒はなかなかうまく白をとっちめられない仕掛けになっている。つまり黒16-十一は囲うでもなく広げるでもない中途半端な石になってしまう。と言って17-十一に低く囲えば、今度は上からいろいろな利きが生じて大切な中央に悪影響を及ぼす。ならば白からどこに入られても対応できそうな懐を広げる手がいいのです」と明快に説明していただきました。

 では私が打った15-十五が正解かと言えばそうではない。貴公子は「ボクなら1路上(15-十四)にずらしたい」という。部分的な形になずんだ私の着点は「右下の戸締り」という消極的な意識が底流にあることを否定できません。しかし貴公子、そしてモンパパが!示した1路上は「世界の中心に芯を入れる」という積極的な志がうかがえて、思わず嫉妬してしまいそう。右辺でも下辺でも、白から打ち込まれれば黒はそれを取ってしまうことはできない。となれば、打ち込んだ白を小さく生かすか重くして攻め立てるか、いずれにせよ周辺で大利を得るという目的にぴったりな感じです。

 右下が「全局的な芯」という観点とすれば、世界碁さん、ototo先生、梵天丸さん(参考意見)らがご指摘された左下(5-十三や5-十四)やモンパパの参考意見=上辺(13-七)への回答はむしろ模様をさらに広げる発想に近そうですが、この局面では右辺から右下、下辺に広がる模様の中心に「ドカン」と来られるのが怖そう。左辺や上辺方面から白が侵略を図っても、それに対して中から受ける手が右下を中心とする黒の模様強化に役立つので腹が立たないのではないでしょうか。ついでに、モンパパが参考までに言及していただいた7-十六抜キは後の譜で貴公子が触れるように、かなり終盤にならない限り小さいそうです。

 もう一つ興味深いのは世界碁さんのご指摘。5-十三に模様を目いっぱい広げて白から15-十五あたりへの「ドカン」を迎え撃つ作戦です。黒は(おそらく15-十四と)ツケて白をいじめながら右辺や下辺を自然に確定地化しようという深慮遠謀でしょうか。第二譜で白が9(7-十七)から11(4-十七)と入ってきたとき、世界碁さんは「黒は遮ってほしかった」とご指摘されていました。このあたりの独特な感覚にはただ感服するしかありませんが、私にはもちろん善悪のほどはわかりません。
 
 さて、「全局的な芯」から少しずれた私の黒36を見て、貴公子は17-九ではなく1路下の17-十に堂々と割って入ってこられました。ここで黒が17-八と鉄柱にサガルのでは上方が凝り形だし下方はスカスカで17-十四ツケあたりから大いばりで治まられそう。で、狭いことは承知で下から黒38(17-十二)とツメましたが、当然のように白39(17-八)とツケてくる。ここで16-九と伸び、白17-九なら16-六にバックするか、15-十一あたりに封鎖すれば普通だったようですが、何かの拍子で白に中へはみ出されるのを懸念して16-十(黒40)とツケたのが「案外いい手だった」(貴公子)ようで、バタバタと黒46まで形が決まりました。そこで1間にカッコよく飛び出した白47(14-七)に意表を突かれて私は間違えました。この黒48を皆様ならどこへ打たれるでしょう。ご高説を聞かせてください。

亜Q

(2010.10.7)


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