時間つなぎA「ザル碁の目からウロコ」

ご指導いただいた碁のある局面。ザル碁の私の目からうろこが落ちるような感動を味わった手を「次の1手」形式で出題させていただきます。「耳赤・恥の1手」と違って、言わば時間つなぎの一発芸。強い方ならひと目でも、ザル碁の身には教えてもらわなければ百年考えてもわからない。そんな感動を一部の変人諸兄の皆様と共有したく、恥を忍んで先陣を承ります。

敬愛する剣持丈先生(関連記事1関連記事2関連記事3)との黒番(逆コミ40目)の碁(4月18日、白8目勝ち)。

左辺17まではきっとお馴染みでしょう。白から打ち込まれればガラガラになることは知っていますが、逆コミをいただく身として碁が決まっていくからむしろ歓迎する気持ちでした。が、もちろん先生はそんな風には打たない。白18と右辺を割り打ち。上下対称なので一瞬15−十のボウシも頭をかすめましたが、上辺と下辺に白の足(14と16)が出ているのが癪なところ。ごく普通に19と詰め、白20三間ビラキにおとなしく21とケイマに受けました。ここまで特に問題はないそうでした。

そこで白は22と1間に飛び上り、黒も23と1間に追随。「ここは右下を守る人も少なくないが、中央を志向する23がいい」のだそうです。次いで白は右下24と三々入り。ちょっと狭いけれど25から押さえました。ここは先手を取って打ちたい手がある。そのため27、29と四線を伸びましたが、「27はやはり黒28と押さえ、一路でも白を右下に閉じ込めるように打つ方がわかりやすい」し、せめて黒29では30に押さえ、白がその下をハネたところで手を抜いたらいい」とのこと。「将来18―十七から二段バネする寄せをみるところ」と教わりました。

白30に手を抜いて私は打ちたかった31に回りました。「この手は絶好点」と、いつも辛口の先生から珍しくほめられました。白はノータイムで32にハネアゲ。さてここで次の黒33を「次の1手」とさせていただきます。ノーヒントですから、お好きな着点を自由奔放にお示しいただければ出題者冥利に尽きます。どうぞよろしくお願いいたします。

亜Q

(2009.4.24)

時間つなぎA「ザル碁の目からウロコ」回答編

「時間つなぎの悪手」もせいぜい3手が限度でしょう。Aで出題させていただいた「次の1手」の回答編をご覧いただきます。皆様からの回答はさすがに急場と思われる右辺に集中いたしました。

正解は「17−九(黒1)」、右辺星下の白へのツケ。真っ先に回答されたモンパパがズバリ賞です。たまたま「掲示板」に投稿されたモンパパに最初に声をかけたのが私の打ち過ぎでしたか。以下、白16−九、黒17−八、白16−八と進んだ時に18−十と右辺を渡る。「白を根こそぎ追い立てて黒好調」とジョー先生が太鼓判を押されました。

実戦での私の第一感は17−七ツケ。「これもある」とジョー先生は言ってくれましたが、白にハネ出された後、黒17−八にノビ込んで白を浮き上がらせる手が見えてない。黒16−六切り違え、白18−七下アテから絞り形にされて面白からず。そもそも、右辺の白3子の中で最も軽い白20(17−六、右上三々も空いている)につけるのは異筋ではないかと思い始め、「それなら全体を重くしてやれ、無駄にもなるまい」と16−九にノゾキました。梵天丸さん、まーべらすさん、そして世界碁さん、ザル碁の私に同調していただき、まことにありがとうございました。

ところが案の定、ジョー先生から耳にタコができるほど聞かされていた「覗きは犯罪」と、また聞かされるハメになりました。白に当然のように16−十とつながれ、白を強くしただけで次の手が見えない。「16−八に並んで白を分断する」と言われる梵天丸さんの力強さが私には生来欠けているのです。実はこの後の実戦進行は記憶から飛んでいます。困り果てて黒35は13−十にボウシしたかもしれません。まさにたくせんさんが看破された通り、黒31は好手と褒められる資格がなかった{><;。

興味深いのは、かささぎさんがご指摘された黒17−八への打ち込み。17−九の正解や17−七に比べて「有無を言わせぬ強制力」はないかもしれないけれど、その分、何となく奥深い味わいを感じられます。でも、白20はやはり軽い。右上三々は空いているし、右辺18−八下ツケの余地も残されている。ぼんやり15−八にボウシされていて困りはしないか。

もう一つ、ここへ石が行くのは今がタイミングかどうか。「何も決まっていない黒21の時点で敢行すべし」という考え方もありはしないか。実際に私は右の参考図のように黒21から25まで運び、白が他の大場を打てば、次に上から白を圧迫するAとBと中から動き出す手(取られても外からの締め付けがありそう)を見合いにする進行(参考図)にかなり触手が動きました。その際、黒C、白18−六を交換した方がいいのかなど細かい点にも悩まされ、結局見送りましたが。

ある意味では正解以上に「目からウロコ」が落ちる思いがしたのは、世界碁さんの回答。当初私は「9−十六」と読み違え、「ちょっとピンとこないなあ」などとゴーマンな態度だったのですが、改めて考え直すと「下辺を先着するのもあるのではないか」との気もしてまいりました。下辺を打つなら、黒13−十五の上ハネは白12−十六ノビまたは12−十五二段バネを食らっていかにもまずそう(わざわざ触れていただいたモンパパのサービス精神に感謝)。第一感は7−十六カケ。その後白にどう打たれようと、どこかで右辺に手を回す。さらに踏み込んで、13−十七切り味を含みに11−十七や7−十七ツケ(1路右の8−十七では右側から詰められて困りそう)もありはしないか、でも後手を引きそう――などと愚考を重ねてしまいました。

要するに、「急場と思われる右辺から動いて全局をつくり上げていくか」、それとも敢えて右辺のもろもろを保留し、「白模様が広がりそうな下辺から動いて右辺および全局をにらむか」――。ザル碁の私には考えるだけ無駄かもしれないけれど、「だからこそ、碁なのだ」と日がな一日、独り善がりを繰り返す悦楽に耽ることができました。

亜Q

(2009.4.30)


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