シューコー先生の次の一手(6)

問題図

ザル碁の愚生にも実行できるせめてもの美学は「潔い投了」。へぼな出題を5問で終わらせ、お後を高手に締めていただくつもりでしたが、真打ち・梵天丸さんのご家族が入院中とあって、今しばらく前座を務めさせていただくことになりました。時折こちらをお訪ねいただく変人諸兄にはまことに申し訳ありませんが、引き続き秋の夜長の退屈しのぎにお付き合いください。

さて今回は、日中のホープ同士(当時)の対局から。黒は王誼さん、白は後にNHK杯や新人王に輝く愛弟子・三村智保九段(43歳)。シューコー先生は、誰彼を隔てずに中韓の若き才能を発掘し、自らの血と肉を惜しみなく分け与えた「古い井戸を掘った友人」。没後3年目を迎える今年は両国の関係が最悪のようですが、そんな些事・俗事を超えてシューコー先生の献身は長く記憶にとどめられ、語り継がれるに違いありません。

局面は右下、黒の二間高バサミ定石の変化。白が大ゲイマにカケる汎用形を避け、意欲的な大々ゲイマから競り合いが始まったばかり。わずか11手が進行して、次の白12に、シューコー先生は異議を唱えられました。「右下白二子は黒からのターゲットには違いないが、楽に治まることができる。だから黒は、攻める振りをしながら白の動きに応じて下辺や右辺の打ち方を決めようとしている。そんな黒からの狙いを察知した上で次の白の12を考えて欲しい」――。

亜Q

(2012.9.23)


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