シューコー先生の次の一手(3)解答編

正解図

次の一手は黒1、白2、黒3のハネツギ。ここで白aの受けなら大変な利かし得になる。布石の大どころがごろごろしているのになぜと思うかもしれないが、ここは石の厚みに関わる急所。いわば、ここから戦いが始まる「戦いの原点」であると、シューコー先生が強調されていました。

左下はヨセの手、白bは大きなヒラキ、と考えるかもしれないが、左下の白模様は、黒cハサミツケ、黒dノゾキ、あるいは黒e打ち込みなどがあって白の薄い形。けれど左下を白aと受けるのはあまりに辛いから、成否は別にして白4に構えて広く戦うところだろう(シューコー先生の【正解図】1〜4)。

言われてみればこのハネツギは、確かに「誰でも目がいくはず」(シューコー先生)だし、かささぎさんも言及されていた通りとても「気になるところ」には違いありません。けれど、自ら打つのは何となく「気が差すところ」でもあります。いざ相手に打たれてみると、「ぐはっ」と一声叫んでしばし息を整え、「生き馬の目を抜くようないやな世の中じゃのう」などと悔しさを噛み殺しつつ独り言めかして世知辛い相手をなじるのが関の山。「覆水盆に帰らず」と心中で臍をかむのが、「碁は弱くてもせめて上品でありたい」と願う凡夫の常なのでしょうか。

さて、今回は常連のたくせんさんが中国へ研究旅行に旅立たれて不参加でしたが、「ピンはず」を自称されていた梵天丸さんがみごと正解!「前2問はヒントを考え過ぎて失敗したから、本問は直感勝負!」とはヒントとの違和感(つまり、シューコー先生の言葉遣いへの不適応)を自認されているようですが、かささぎさんが会長、愚生が副会長を務める「ノーテンキ流」を踏襲されるような開き直りが功を奏したようです。そう言えば、気持ちよく打ち進めていた局面で互いに気になって仕方がない着点にちゃっかり先行され、ショックと悲しみを引きずるまま後がボロボロになるのが梵天丸さんと愚生の対局でのお約束でした。

参考図1(実戦)

sekaigoさんとかささぎさんは下辺星の白へのボウシ(10−十五)、そしてお二方よりも温厚な愚生はその1路右に控える11−十五を選びました。実戦で楊嘉栄プロが打ったのは何とさらに遠慮した黒1でした。以下【参考図1】のように実戦が進行して白6まで。白はすかさず左下を決めて強力な厚みを形成、白aも利くため、黒からの左辺への打ち込みも怖くない。「白模様のスケールが大きい」と、シューコー先生は評価されていました。この後、黒b受けでは白cとノビられて左下の白地がどんどん増えるし、

参考図2(実戦続き)

実戦で現れたように黒7(11−十六)からの出切りには、【参考図2】(実戦続き)のように黒が苦しい戦いを強いられる。

参考図3

さらに白10では、【参考図3】のように、左下の強力な壁を利用して黒を潰すことも可能だそうです。

(2)に対する参考図

なお、梵天丸さんからいただいた(2)に関するご質問について。この問題は対局者が正解図を打ったため、簡単な参考図が1つだけ掲載されていましたが、愚生はそれを書き漏らしました。以下はシューコー先生のご説明から。
右辺の白2子をにらんで下辺の白との間を裂くと言っても、黒1ケイマのような形では軟弱。白2と先に逃げられて黒は次の手がない(つまり正解のように黒14−十四マガリなら13−十四とオス手があるから、白は手を抜きにくい=筆者注)。また黒1でaなどと隅を打つのは、「白b、黒c、白d、黒e、白f、黒gまで受けさせた後、白1とトンで白が楽」とのことでした。

亜Q

(2012.8.29)


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